社長になるメリットが薄いではないかというと、あにはからんや、これが大ありなのである。偉くなればなるほど会社の「経費」が使えるのだ。社用車はもちろんのこと、接待費は使い放題、ゴルフもしたい放題、企業によっては社長専用の別荘も与えられる。つまり、社長になったら、ポケットマネーを使う必要はほとんどない。すべて会社の経費で落とせるのである。だから、役員や社長のときは毎晩のように銀座で飲み歩いていたのに、会社を引退したとたん、ぱったり足が遠のく人がほとんどである。
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自分のポケットマネーではとても銀座のクラブをはしごすることなどできないからであり、そこに日本のサラリーマンの悲哀があるといったらいいすぎだろうか。私も最近はたまにしか銀座に足を向けないが、いつも取り巻きをつれて豪快に飲み歩いていた社長が突然、店に顔を出さなくなる。ママに聞くと、社長を退任したという。そういう人はたくさんいた。これが欧米の経営者なら、接待費なんて概念はないから、自分のポケットマネーで酒を飲むのは当たり前となる。経営の一線を退いても、銀座が好きなら、いつでも銀座で飲むことができる。しかし、引退したのちも銀座で飲み歩いている日本の経営者など稀であろう。その点をみても、日本のサラリーマンはいかに特殊な文化や価値観のなかで生きているかがわかるのではないか。繰り返すが、こういう特殊な企業社会というのは、世界史のなかで二十世紀後半の日本にしかなかった。